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Gリーグ 外伝        第5章  苗木野 そらの夢

                                                     作者名    79ers                 



 苗木野 そら。
 ポジションはセンターバック。
 競り負けない高さ。
 当たり負けしない強靭な肉体。
 守備の要としてプレイしていた。
 だが、時に攻め上がることもあり、高さを生かし、強烈なヘディングシュートを放つ。
 守りだけでなく、攻撃的なDFだった。



「ちょっと待ってて……」
 烏山 ちとせ、水無 灯里が見つめる前で……
 そらは、自分の収納ケースから一枚のユニフォームを取出す。



 ブルーのユニフォーム。
 日本代表のレプリカユニフォーム。
 そのユニフォームの一部分にペンで英語が書かれていた。
「LAYRA」(レイラ)と……



「そら……レイラってあのレイラ・ハミルトンのこと?」
 出されたユニフォームを見て、ちとせはそらに尋ねる。



「うん。本人に書いてもらったんだ。私の宝物」
 そらは、笑顔で大きくうなづく。



「あのレイラ・ハミルトンにサインしてもらったんだ。そらちゃん凄い!」
 灯里はユニフォームを手に取り、目を輝かせていた。



 レイラ・ハミルトン。
 女子サッカーアメリカ代表。
 ポジションはDF。
 代表ではキャプテンを務めている。
 オリンピックとW杯で金メダルをアメリカにもたらし……
 個人では常にベストイレブンに選出され、MVPにも選出された。
 アメリカは、サッカー不毛の地と呼ばれている。
 だが、女子サッカーの中では、世界ランキング1位に君臨し続けている。
 それを保っているのはまさに彼女の功績といっても過言ではなかった。
 
 世界中の女子サッカープレーヤーの憧れであり、目標であった。



「これはね……」
 ちとせ、灯里がユニフォームに見ている中……
 そらはそのユニフォームの思い出について話始めた。



 私が中学生だった時に、アメリカ代表が来日したの。
 日本代表と試合をしたんだけど……
 その試合にレイラさんが出場していたんだ。



 日本代表のレプリカユニフォームを着て、見ていたんだけど……
 レイラさんのプレイに魅了されてしまったの。
 世界最高のプレイに初めて触れたのね。



 懸命に日本代表の選手がアメリカ陣内に攻めこもうとするんだけど……
 ポジションを取ろうとするんだけど、当たり負けするばかり……
 まるでどこにボールが来るのか分かっていると思うように、どんどんパスをカットして
いくし……
 全然、日本はチャンスらしいチャンスが作れないの。



 それで、日本が攻めて来ないと見るや否や……
 日本陣内に攻め込んで、どんどんチャンスを作って行くの。
 私、DFって自陣に貼りついて、相手の攻撃を防ぐ人だと思ってたんだけど……
 レイラさんを見て、守備ばかりしていればいいんじゃないって教えられたの。



 相手にしている日本代表の選手達は、Gリーグの精鋭の集まりで……
 本当は凄い人達なんだけど……
 レイラさんの前では、選手達は子供同然。
 格の違いを見せ付けるってこういうことを言うんだって思ったの。



 私、当時で部活でサッカーやってたの。
 ゴールを決めたり、決定的な仕事をするのは、FWとかMF。
 だから、FWやMFに人気が集まって、実力のない私は、DFしか出来なかったの。
 だから、あんまりDFは地味な存在でしかなかったの。



 でも、レイラさんはそうじゃない。
 ピッチで一番目立ってた。
 シュートも放っていたし……
 ゴールも決めてた。
 私の中のDF像とは全く違うDFがレイラさんだったの。



 私この試合のレイラさんを見た時に、思ったの。
 「レイラさんみたいになりたい!」って……



 それで試合が終わった後……
 ちょうど、アメリカ代表がスタジアムからバスに乗るところを出くわしたの。



 私、バスの前にいたところをちょうどレイラさんが来たの。
 もうプロポーションは抜群。
 そのままモデルとしてもやっていけそうな風貌。
 一目見ただけで、うっとりと見とれてしまったの。
 まさに、巧くて速くて強くて美しい。
 全てが揃った選手ってこういう人を言うんだって思ったの。



 目の前にきたところで。
 私、勇気を出して話しかけて見たの。

「ハ……へロゥ。ア・アイアム……サッカープレーヤー。アイ……ホウプトゥ……プレイ
……トゥギャザー……ウイズユー」
(こんにちは、私はサッカープレーヤーです。貴方と一緒にプレイしたいです)



 私、とにかく知ってる英語で話したの。
 凄い緊張してたし、勉強不足で文法がめちゃくちゃの英語。
 今思えば何言ってるんだろうって思ったんだけどね。



 そんな私に彼女は笑顔で答えて……
「ミィートゥ。アイ ホウプ トゥ プレイ ウイズユー。カム トゥ アメリカ。」
(私もよ。貴方と一緒にプレイしたいわ。アメリカにいらっしゃい)
 そう言って、私の着ていたユニフォームにサインしてくれたの。
 二人だけの約束の証として……



 だから、私、いつかアメリカに行こうって思ったの。
 レイラさんと同じピッチでプレイする約束を果たす為に……



「それで、そら。アメリカにあてはあるの? 寝所ぐらいは確保しないときついよ」
 ちとせはそらに声をかける。

「ない! でも、大丈夫! 英語勉強してきたし、必死に練習した! 私、絶対実現する!
憧れのレイラさんとの約束なんだもの! 何としても果たす!」
 そらは力強い言葉でちとせに声を返す。



「そ……そう……」
「凄いよ〜そらちゃん」
 そらの迫力にちとせと灯里は圧倒された。



 言葉も習慣も違う国に飛込む。
 知り合いもない。
 まさに、裸一貫でのチャレンジ。
 まさに、無謀としか言えないチャレンジだった。



 でも、そらは常に全力投球。
 人一倍の情熱を持っている。
 その情熱溢れる行動が不可能なことも可能にしてきた。
 現に無理だと言われた各上の社会人チームや大学チーム相手の時にも……
 そらがチームを引っ張り、勝利を収めたこともある。
 それだけそらには強い精神力がある。
 きっと凄い困難が待っていても、そらならその精神力で超えていける。
 一緒に同じ環境で生活してきたちとせ、灯里にはそう思えるほどの安心感があった。



 そらの話が一段落したところで……



「よ〜し、みんな夢の実現に向かって頑張りましょう」
 3人は、徐に手を重ね……

「「「はいっ!」」」
 決意を改めて固めた。
 これから挑む大きな夢に向かって……



作者のあとがき




                                              


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