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ひぐらしのく頃に   神喰い編(0)

                                                作者名    桜葉  遙                 


第1話へ



????年??月??日 ??時??日


「みぃつけた」

 

 夕暮れのおそらく代名詞になるだろう、オレンジ色の帯びた光が一人のセーラー服の女の子から逃げていくように引いていく。

 ショートの髪型や何やら気の抜けた顔立ちからまだ幼さが残っていることを伺わせる。

 果てしないゴミ廃棄場と化したダム現場に最後の夕暮れが引こうとする中でも、彼女の存在は消えていない。

 明るい暗いは関係ない。

 夕と夜の移り変わりなんてどうでもいい。

 興味があるのは目の前にいる女性。

 歳は20歳ぐらいだろうか、全体的に締りのある身体と装飾品をロングヘアーからは、セーラー服の女の子とは違い幼さが無く現在の世俗的な姿を思わせる。

 

「やっと追いついたよ、やっぱり鬼ごっこって楽しいね」

「たっ…! 助けて!」

 

 鬼ごっこはセーラー服の女の子が思いつきで始めた遊び。

 最初は女性をお持ち帰りしようと近づいたけど、しつこく詰め寄ったら逃げられた。

 セーラー服の女の子にとって女性の存在は誰のものでもない。

 人間とは思いたくないけど、ただ気に入ったからお持ち帰りしたいだけ。

 いや……、それだけではないけどね。

 

「後はレナがたっちすれば勝ちだよね」   

「……! きゃぁぁああ!」 

 

 背筋がぞくぞくする。

 お持ち帰りィィィ! 顔を赤面させながら同時に口のしまりがほどかれていく。

 もう動けなくなったと思ったのに、まだ逃げる気はあるらしい。

 ふらふらとした足取りで、背筋を震わせながら逃げる様に絶頂する。

 ますます、おおおおおお持ち帰りィィィ!! するしがいがあるぅぅぅ!

 でも実はわかっていた、なぜ女性が逃げているのか。

 しつこく付きまとわれたから? そういうことではない。

 薄暗くなっていく中少なくなってきた夕暮れの光を一身に浴び、存在感を見せ付けている一本のナタ―――。

 追いかけているがか弱い腕で持つナタの重さによる疲れの感覚などありはしない。

 いやあるのは追いかけるのを楽しむ感覚だけだ。

 

「鬼ごっこってたのしいね」

「だっ誰か! タスケテ!」

 

 足場の不安定さは今にも女性を引きずり込もうとする。

 今か今かと女性の足を引き込もうと待ち構えている足場はレナの手先にも思えてきた。

 

「あははははははははは」

 

 レナから発する影が残っている夕日の色をかき消そうとする。

 それでもまだ距離は開いている、この場から逃げなければ存在自体がレナに消されてしまう。

 

「は、早く逃……逃げなきゃ!!」

「待ってよ! あはははははははははははははははははははははははははは」

 

 雛見沢の自然は大きいからいくら走っても窮屈な思いはしない。

 いくら走っても状況が変わらない、果てしない2人だけの時間。

 今か今かと女性を追いかける陰が迫りつつある。

 

「鬼ごっこって楽しいね! あはははははははははははははははははははは」

 全ての物音をかき消すレナの咆哮。

「ひっひぃ!」

 

女性に安心して休める場所はない、女性の視線に入った光景は年がだんだんと重なって肉付けされ成長したと思われるゴミ山だった。

女性が逃げるルートを塞ぐように聳え立つゴミ山は少なくなっている夕日の光を全て遮ってしまっていたため、山の付近は暗くなっている印象を与え続けた。

レナがいる方向に逃げるわけにはいかない、かといってゴミ山は一つだけではない。

逃げたい方角はごみの山が重なって山脈になっている。

 生きたければ登れという意味を指していることはすぐに理解できた。

何やら女性は一瞬立ち止まった後、手取り足取りで昇り始めた。

 レナは微笑を浮かべ、その後ゆっくりと彼女の後を追いかける。

 逃げられるのかな? と余裕を浮かべながら高みの見物気分だ。

 逃げられないよ、この雛見沢からは……。

 最後のあがきは見ることに越したことは無い、もう動けなくなったら彼女が動く音が聞こえないんだし……。

 レナは起用に粗大ゴミの不安定化した足場を飛び越えていった。

 

「きゃあ!」

 

 しかしどうやら、捕まえる手間は省けそうだ。

 彼女は急な山を登る途中で足を踏み間違え、1部分の粗大ゴミと一緒に崩れ落ちたからだ。

 慌てて女性はもう一度体勢を立て直そうとする、しかし先ほど崩れ落ちた粗大ゴミに巻き込まれて右足が下敷きになっていた。

 足は動かないどころか、先ほどから激痛をいわしている。

 目尻に涙を貯めながら、必死に粗大ゴミの瓦礫をどかそうとする。

 レナもその光景を後ろから眺めていた。

 そう真後ろから―――。

 

「おいついた、あはははははははははははははははは」

「ひぃ! 嫌ぁ!」

「今度こそたっちだね、あはははははははははははは」

「た、助けて! お願いします!! なんでもします!」

 

 必死に首を横に振る女性。

 レナは女性の行動に首をかしげながら、夕日の光が薄暗くなっている中少ない光をナタに集めた。

 もうすぐ光が逃げる。

 女性も早く逃げたい日が落ちる前に。

自分を完全に覆いつくそうとする殺人鬼の気配に背筋がけいれんする。

 

「ごめんなさい! 別に悪気があってやったわけじゃないの!」

「嘘だ! 嘘だ! 嘘だ! 嘘だ! 人の話を聞けよ!! メスブタが!!」

「!」 

 

 レナの咆哮があたり一面響くと同時に、女性の鼓膜が痙攣するくらいに震え上がった。

 女性の口が完全に塞がらないままレナが話を続ける。

 

「それを知ったオヤシロ様がレナの耳元でこう言ったの……どう言ったとおもう?」 

 

 レナは力の入らない声で、女性の耳元にささやいた。

 聞こえているかどうかわからない、ただ話す一言一言に耳を痙攣させるだけだ。

 しかし、レナが言ったことには答えてくれない。

 もしかして、レナのことが怖いのかな? かな? 

 

「どう言ったとおもう?」

 

 レナが持っている愛用のナタは夕日が落ちていくうちに何かの黒光りによって存在感が逆に大きくなっていく。

 ナタの存在が女性の過呼吸の原因のか、まだ過呼吸が止まりそうにない。

 しかし、過呼吸にさせたナタ以上の存在はまだ健在だ。

 

 それは……レナの存在だ。

 

「どういったと思う?」

 

 一歩。

 

「どういったとおもう?」

 

 一歩一歩。

 

「ドウイッタトオモウ?」

 

 一歩一歩一歩・・・・・・近づいていく。

 女性は直感で何かを悟った。

 何かを悟った瞬間、毎秒毎秒額から汗がしたたり落ち目を刺激する。

 

「オシエテアゲルネ……ドウイッタノカ」

 

 レナは愛用のナタを改めて持ち直した。

 そして再び耳元でささやいた。 

 

 

「―――コロセって……イッタンダヨ」

 

 ゆっくりとナタが上段に構えられる。 

 

 

「きゃあああ!!」 

「あははははははははははははははははははははははははははは!!!  」

 

 レナの気分をさらに高揚させる。

 

「オヤシロさまは“いる”の、あはははははははははははははは!!!」

 

 レナの高揚をよそに女性はすでに虚ろな瞳が彼女を捉えていた。

 彼女に対する女性の力ない視線は何かはらわたから痙攣をさせる

 

「いいね! その眼差し! お持ち帰りィィィ!!!」

 

 

まだ、ひぐらしは鳴き始めたばかりだ。

                               (第1話へ


作者のあとがき

とりあえず、投稿作家1号として投稿させていただきました、まだ初心者ですがよろしくお願いします。
管理人様、投稿小説を採用させていただきありがとうございます。
物語として続きが書けるかどうか自信がないのでとりあえず冒頭部分だけにしました。
それでも現在構想を練っているところですので、また機会があればよろしくお願いします。



                                                                     読み終えたら感想をお願いします。                                              


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